私にとって日経「私の履歴書」は人生の教科書です

サイン

 「私の履歴書」の字は1986(S61)年ごろから登場者ご自身が書くことになっている。書の上手な人もいれば、あまり上手でない人もいる。書に自信のない人は何度も筆書きして一番上手に書けた「私の履歴書」字を担当記者に手渡すという。字は人柄を現わすと言います。登場者の字を見てその人柄を想像してみてください。

政治家のサイン

 登場した首相経験者の自筆は、1986(S61)年以降ですから、それ以前の鳩山一郎氏、田中角栄氏などの政治家は活字によるものですが、それ以後の福田赳夫氏、宮澤喜一氏、細川護熙氏などは立派な書体です。

芸術家のサイン

  1. ジョージ・川口氏(ドラマー):スティックでドラムを叩きつけている感じのペン書体です。
  2. 阿久悠氏(作詞家):ピンクレディーがUFOを踊っているようなクネクネの書体です。
  3. 流 政之氏(彫刻家):原石に鏨(たがね)を彫りこむような力強い書体です。
  4. 船村徹氏(作曲家):船村メロディを聴いているような優しい書体です。

一風変わった書体(長嶋茂雄氏)

 原則、登場者本人が題字を書くことになっていますが、悪筆のため「どうしても、ご勘弁を!」というノーベル賞受賞者がいました。初日の末尾にこの人はこの旨「お詫び」文章を入れておりました。しかし、長嶋茂雄氏は脳梗塞の後遺症で右手が使えないため、左手のリハビリを兼ね写経で特訓をおこない、題字を書いたといいます。この長嶋氏の題字を見て誰が笑えようか。

外国人のサイン

デザイン

枠デザインの変遷

 現在の「私の履歴書」の表題は、飾り付けが全くなく登場者が自ら書かれた「私の履歴書」の字だけですが、1956(S31)年3月1日に登場した鈴木茂三郎氏の場合、自署はなく「私の履歴書」はデザインされたものでした。
 豆単語発明の赤尾好夫氏、政治家・鳩山一郎氏、柔道家・三船久蔵氏、侍従長・入江相政氏など個性的で興味深いです。そのなかで、囲碁名人の高川格氏は碁石がデザインでしたが、将棋名人の大山康晴氏は平凡なデザインでがっかりしました。 面白い発見は社会党党首だった浅沼稲次郎氏だけが初日のデザインと7日からのデザインが違っていたことでした。