掲載時肩書 | 文化人類学者 |
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掲載期間 | 2017/11/01〜2017/11/30 |
出身地 | 千葉県 |
生年月日 | 1937/11/30 |
掲載回数 | 29 回 |
執筆時年齢 | 80 歳 |
最終学歴 | 京都大学 |
学歴その他 | 都立上野高校 |
入社 | 京大助手 |
配偶者 | 友人妻 の友 |
主な仕事 | 大阪万博、世界各地の仮面・神像、食文化研究、国立民族学博物館、酒文化、麺文化、クッキングスクール |
恩師・恩人 | 梅棹忠夫 |
人脈 | 今西錦司、小松左京、伊谷純一郎、本多勝一、岡本太郎、黒川紀章、歌田勝弘、安藤百福、桂米朝、 |
備考 | 好奇心が旺盛 |
未知の世界を紹介してもらい、面白く愉しかった。氏はフィールドワークが売り物の京都大学・人類学・考古学分野で、今西錦司、梅棹忠夫、河合雅雄、樋口隆康、伊谷純一郎、梅原猛につぐ7番目登場だった。発想が奇抜でその行動が愉快であった。「食」に関する著作も多い。是非読んでみたい。学者ではないが
1.「鉄の胃袋」の尊称
氏は探究心が強く何に対しても行動を起こし、学問の対象にしてしまう。最初は、ワニ、ニシキヘビ、コブラ、シマウマ、ラクダ、芋虫、セミ、シロアリなど動物や昆虫を見ると、「これは食べられるか」「食べてみよう」「たくさん食べる」をモットーにしたので、「鉄の胃袋」の尊称を受けた。その悪影響で、食中毒、肝炎、糖尿病を患ったとも書いている。しかし、ここから学者魂が頭も持ち上げてきて、食材を加工して食べるまでの過程を料理のシステムとして位置づけ、下ごしらえや味付け、盛り付けなど6つの工程に分類した。そしてそこで使われる料理用具の保有状況に着目し、各民族の特徴を明らかにして「台所文化の比較研究」論文(食生活を探検する)に仕上げた。
2.初海外遠征はトンガ
初めての海外遠征は1960年、南太平洋の島国、トンガ王国の調査だった。謎の巨石遺跡が点在する親日国である。皇太子が来日する情報が入ってきたため東京に急行、会っていただき、学術調査を認めてもらった。資金は少ないのでトンガに寄港する貨物船を探し、ただで乗せてもらった。
トンガでは巨石建造物の計測をする傍ら貝塚遺跡を探して歩いた。考古学の観点で発掘調査をすれば今後の研究につなげられるのではと考えていた。ところが、島には現代の貝塚が無数にあり、古い貝塚がどれかわからない。人々は昔から貝を食べては裏庭に捨てる生活を続けていたのだ。物言わぬ遺物を手掛かりに歴史を探る考古学ではなく、現代に繋がる人間の営みの積み重ねを研究する民俗学に興味を持ち出したのはトンガ体験がきっかけといえる。
3.京都大学人文科学研究所から今西錦司研究会へ
戦後まもなく「世界文化に関する総合研究機関」として設立された京大人文科学研究所は分野をまたがる学際研究の場として知られていた。東洋史学の貝塚茂樹氏、フランス文学の桑原武夫氏らが所長を務め、歴史や哲学、人類学などユニークな業績を上げた人材が集まっていた。
探検部顧問で生態学者の今西錦司さんは、私の学生時代は人文研の社会人類学分野の教授だった。この今西研究会には文明の生態史観の梅棹忠夫さん、照葉樹林文化論の中尾佐助さん、新たな発想を生み出すKJ法で知られた川喜田二郎さんら、気鋭の研究者が集まり、討論を交わしていた。考古学から文化人類学に興味が移っていた私はオブザーバーとして参加した。
4.「台所文化」の比較研究から「住居空間」の人類学へ
考古学は出土遺物などをもとに昔の社会を考察する。人間の生活文化を考える人類学でも、衣食住にかかわる用具などの「物資」には民族の社会や文化が投影されるだろうと考えた。物質文化の比較で、ものと人間の関わり合いを探るという研究の方向性が見えてきた。
「食生活を探検する」と同じ調査記録を土台にして、「住」の文化を比較して「住居空間の人類学」も世に出した。これは住居で営まれている行動を睡眠・休息、育児・教育、食事・接客などに分類し、異なる民族の住居の機能の共通性や違いを明らかにしたものだった。これらから人類は、食べる前には狩猟や農耕といった、食材の獲得や生産があり、食べた後には消化や栄養摂取といった生理がある。その間にある食品加工や食事行動は人間が作り上げた文化の産物として、食文化研究を学際的総合的にとらえる学問に発展させた。
5.石毛クッキングスクール
食文化研究の出発点として「人間は料理する動物である」「人間は共食をする動物である」という2つのテーゼを考えた。食べる前には狩猟や農耕といった生産がある。食べた後には消化や栄養摂取といった生理がある。その間にある食品加工や食事行動は人間がつくり上げてきた文化の産物だ。食文化研究とは、台所と食卓から食を学際的総合的に考える学問ととらえてみた。
これが高じて「酒と飲酒の文化の研究」、文化麺類学のために「麺の系譜研究会」も立ち上げたり、いろいろ世界各地を食べ歩いた経験を活かし、料理好きから「石毛クッキングスクール」も主宰することとなった。
いしげ なおみち 石毛 直道 | |
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文化功労者顕彰に際して 公表された肖像写真 | |
生誕 | 1937年11月30日(86歳) 千葉県 |
居住 | 日本 |
国籍 | 日本 |
研究分野 | 人類学 |
研究機関 | 京都大学 甲南大学 国立民族学博物館 |
出身校 | 京都大学文学部卒業 京都大学大学院 文学研究科 修士課程中途退学 |
主な業績 | 食生活の物質的、精神的な側面を統合的に研究 食文化研究の提唱 |
主な受賞歴 | 南方熊楠賞(2014年) |
プロジェクト:人物伝 |
石毛 直道(いしげ なおみち、1937年11月30日 - )は、日本の人類学者。専門は文化人類学。勲等は瑞宝中綬章。学位は、農学博士(東京農業大学・1986年)。国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。文化功労者。