掲載時肩書 | 三菱総合研究所理事長 |
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掲載期間 | 2020/11/01〜2020/11/30 |
出身地 | 栃木県 |
生年月日 | 1944/12/15 |
掲載回数 | 29 回 |
執筆時年齢 | 75 歳 |
最終学歴 | 東京大学 |
学歴その他 | カリフォルニア大学 |
入社 | 東大助手 |
配偶者 | 税理士娘 |
主な仕事 | 米留学、知の構造化、地球環境問題、大学でエコ、医工連携、総長、アクションプラン、柏学園都市、大学国際連合、信託基金、プラチナ懇談会 |
恩師・恩人 | 井上博愛 |
人脈 | 植之原道行、奥田碩、山田興一、張富士夫、三木繁光、南直哉、岩沙弘道、 |
備考 | アメフト |
東京大総長として「私の履歴書」登場は、茅誠司氏(1959年1月)、向坊隆氏(1984年10月)についで3番目である。前二者に比べて行政的行動力は官庁と企業、国際人脈を連携させる能力が抜群のように思えた。奥様潔子さんの言葉「後ろを振り返ったことがない、前しか向いていない人」の評価は素直にうなづける。
1.学問も一芸は多芸に通ず(「知の構造化」の必要性)
太陽電池のような半導体デバイスを研究するのに、作り方を探求するプロセス論だけでは独創性ある研究はできない。デバイス論、その基礎となる個体物性論が欠かせない。
一つの専門分野に精通すると、思考の横展開が利くことが分かった。生物の希釈化率と化学の滞留時間は、互いに逆数となる。経済学なども含めて、基本モデルはすべて線形仮定で出発、現実論で非線形になっていく。
こうしたことを理解すると、学問でも一芸は多芸に通ず、ということになる。全体像を把握する力がつくことでもある。あふれる知識を体系的に整理する「知の構造化」の必要性に確信を持った。
2.自宅のエコハウスを東大にも適用
新居を造る計画があり、省エネ技術を結集して「エコハウス」を建て社会実装してみようと思い立った。広さ、使いやすさ、間取りを犠牲にせず、どこまでエネルギー効率を追求できるか。2001年ごろから着想を練り、03年2月に完成した。その結果、エネルギー消費は半分、使う電気の6割を太陽光で賄う。エネルギーの自給自足までは実現しなかったが、それでも8割減ほどになった。
東大総長になった後、今度はキャンパスを使って社会実験をした。CO2を大幅に減らすプロジェクトを立ち上げ、本郷キャンパスを減らす研究の実践の場とした。まず、学内の蛍光灯3万8千本を全て最新の蛍光灯に交換した。パナソニックや鹿島など民間企業と連携し、人がいない研究室や講義室の照明や空調をインターネットで遠隔から制御するシステム開発に取り組んだ。その結果、東大のCO2削減は成功し、年間10億円を優に超える電気代の節約につながった。温暖化、高齢化、地域の過疎化といった日本社会が抱える問題解決は、必ずしも最先端の科学が必要でもないとも思った。
3.信託基金の創設と残念な結果)
ハーバード大、スタンフォード大など米国の私立大学では、卒業生から寄付として集めた巨額資金を、投資のプロに委ねて運用益を得る「エンダウメント」(寄付・寄贈)が盛んだ。集めるのはファンドレイザーと呼ばれる専門家たちで、ハーバード大では700人を超える。ハーバート大のこの基金は約4兆円。年間4%を使うと決めており、その額は1600億円。東大の運営費交付金の2倍を超す。この豊富な資金を原資に世界から優秀な人材を集めている。
ハーバード大の運用ではアジア通貨危機やリーマンなどで10年に一回ほど巨額な損失を出しているが、継続することで平均すると年率15%といった運用成績を上げている。
東大もトヨタや三菱UFJ、東京電力などの15社の尽力で計120億円を拠出した基金ができたが、運用開始から半年後にリーマンショックが起き、この計画は挫折した。残念というほかはないが、何をやるにしてもお金がいる。国立大学の新しい財源として信託基金に期待したのだが幻に終わった。(再挑戦をお願いしたい:私:吉田)
4.プラチナ構想
少子高齢化の社会で、国内総生産(GDP)が増えれば、人が幸せになるという発想はもう古い。途上国のものだ。逆に、人を幸せに生活をよくしようとすれば、イノベーションが起きて新しい産業が生まれ、GDPは増える。今の豊かさを保ちつつ、人の自己実現が可能となる社会が理想である。そのための行動を起こす!しかし、現代社会が抱える様々な難題を解決するのに方程式はない。変化のスピードは速いので、年長者が教えられないことも多い。教える側と教えられる側とに二分化された教育法では、自らで課題を見つけ見つけてそれに立ち向かう人材の育成はままならない。世代が混じり合って、互いに学び合える場こそ、今の日本の社会には必要だろう。
小宮山 宏 | |
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生誕 | 1944年12月15日(79歳) 日本 栃木県宇都宮市 (東京都目黒区出身) |
教育 | 東京大学大学院工学系研究科 |
業績 | |
専門分野 | 化学工学、地球環境工学 |
所属機関 | 三菱総合研究所理事長 東京大学総長室顧問 プラチナ構想ネットワーク会長 ヒートポンプ・蓄熱センター理事長 地球快適化インスティテュートアドバイザー STSフォーラム理事長 アジアカーボンニュートラルセンター(福岡県北九州市)センター長 |
受賞歴 | 2020年瑞宝大綬章 2017年Sheikh Mohammed Bin Rashid Al Maktoum Knowledge Award(ドバイ知識賞) 2016年財界賞特別賞 2003年 化学工学会学会賞 他多数 |
小宮山 宏 (こみやま ひろし、1944年〈昭和19年〉12月15日 - )は、日本の工学者。三菱総合研究所理事長、第28代東京大学総長。
工学博士(東京大学、1972年)。専門は、化学システム工学、機能性材料工学、地球環境工学、CVD反応工学、知識の構造化など。CVDによる薄膜・超微粒子形成プロセス、地球温暖化問題対策技術などを研究している。また、総長就任以来、「東京大学アクション・プラン」を公表して改革を進め、現代のリベラル・アーツの構築、学術統合化などを進めた。総長退任後は三菱総合研究所に新設された理事長職に就任。
2020年東京大学総長選選考会議議長を務めたが、一部候補者を恣意的に排除しようとするなど総長選のガバナンス破壊が批判され、議長を辞任した[1][2]。