多様なデータ分類の効用

「大正13年(1924)シンガポール生まれ。昭和21年(1946)東京工業大学卒、石川島芝浦タービン入社(昭和36年(1961)石川島播磨重工業に合併)。同58年(1983)社長。平成7年(1995)会長。同18年(2006)死去、82歳。」

*戦後の昭和21年(1946)9月東工大を卒業して、石川島芝浦タービンに入社した。そのときの社長が土光敏夫であった。戦後だから全てがモノ不足であった。製図のためのエンピツも消しゴムも満足になかった。ちびたエンピツを大事に大事に、もうこれ以上は書けないというギリギリのところまで使った。消しゴム代わりにはパン屑、この屑のチリを清掃するのに鳥の羽など生活の知恵を発揮してタービンの「技術開発」に努めた。彼は親しみやすい性格なのかニックネームが多く、「ネアカ社長」「消防自動車」「休まない社長」「メモ魔」などであったという。
「メモ魔」はメモするだけではダメで、それを分類・整理する必要がある。筆者にとってもとても参考になった事例であるが、彼はこのやり方を次のように紹介してくれている。

「国際的に仕事をする上でも、多様なデータ収集が必要になる。そうしたデータを私は、寝る前にメモしておく。あるいは自分の部屋でファイルする。内容は、ジョークとして使える話から、知的世界を広げてくれる情報まで、いっさいである。
「メモ魔」と私が呼ばれるのはこのためだが、収集場所は、飛行機に乗れば、持ち帰り自由の機内誌がある。自分に必要なページを切り取って、ファイルに挟む。新聞、社内報、広報誌、要するにあらゆるものが対象になる。
とにかくこうしたデータを、テーマごとにアルファベット順に入れていった。Aのコーナーにはアジア関連があり、Hはヒストリーで世界史年表が取り出せる。」
(「私の履歴書」経済人三十一巻 312p)