私にとって日経「私の履歴書」は人生の教科書です

市場動向に注視

米山が、バドミントン、テニス、ゴルフなどのスポーツ用品メーカー・ヨネックス株式会社の創業者として、キング夫人、ナブラチロア、モニカ、ヒギンズなど世界のトップ・プロをテニスのスポーツアドバイザーに起用し、世界企業に発展させた手腕は高く評価されている。
大正13年(1924)新潟県生まれの彼は、尋常高等学校卒後、陸軍工廠に入り、軍需工場で家業の木工技術をみがく。
 そして、より高度な技術を必要とする船舶特攻隊に転入隊するが、終戦となり昭和21年(1946)、米山製作所を設立し、独立する。
彼が昭和32年(1957)に始めたバドミントンラケット事業は当初順調だった。OEM(相手先ブランドによる生産)供給先のバドミントン用品メーカーから品質を評価され、低価格品以外に中級価格品も製造するようになったからである。
 売上は月間100万円単位で伸びたが、これは「木製のラケットにも必ず新素材が登場する」と考え、早めに手を打ったのが奏功したのだ。この決断の裏には、過去の苦い経験があった。
 それは、米山の会社が魚網の浮きを作り始めて5、6年たった昭和28年(1953)のことである。例年であれば受注がどっと増える秋に、注文がまったく来なかった。得意先に手紙で問い合せても、音沙汰がない。
 やっとわかった原因は、前年に魚網はすでに木綿からナイロン製に替わり、浮きもそれに合わせてプラスチック製に変更されていたということだった。桐製の浮き製造に集中していた彼の製作所は大ピンチを迎え、倒産寸前まで追い込まれた。
 そのときの経験が、今回のバドミントンのときに教訓として生きた。彼はそれを次のように語っている。

「材料の研究にも力を入れた。浮き木製からプラスチックに変わり、たたきのめされた経験は忘れようとも忘れられない。素材の研究開発の先頭に立っているのは、どうやら米航空宇宙局(NASA)だとわかった。NASAの動向にたえず目配りする必要があると思った。情報収集を怠るなと社内にもハッパをかけた」(「日本経済新聞」2005.4.10)
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 技術の進歩は日進月歩です。
 IT技術はドッグイヤーで、1年が6年に相当する速さで革新が起きており、バイオ技術、ナノ技術などの進歩も著しいものがあります。
 ベンチャー企業は、これらの技術に果敢に挑戦し、新しい市場を開拓していきます。現在の技術や経営資源に満足していると、ライバルやベンチャー企業に追い越される運命をたどることになります。
 消費者ニーズや市場動向には、常に注意を払う必要があります。

失敗から得られる教訓
1. 自分の意見を通そうと思うなら、まず相手の意見を傾聴しよう。
日本社会では「和の精神」を尊ぶ傾向があるので、ビジネス社会ではまわりに配慮した自己主張が必要となります。
2. 実務に密着した職務遂行を通じて、具体的に指導することを心がけよう。
OJT指導は、職場の問題発生時に上司が現場で解決法を指導する必要があり、部下の特徴を生かすように心がけることです。
3. 常に消費者ニーズと市場動向に注意を払おう。
消費者心理は常に変化します。企業は顧客志向を目指しますが、売上が順調だと慢心してしまいます。消費者ニーズの変化に対応するには、競合企業の動向など、市場動向に注意を払う必要があります。


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