ウェルチは会長時代、冷戦時代末期(1980年代)のアメリカにおける整理解雇ブームを惹き起こした人物としても有名である。
会社を守り、人材を守らないことから「建物を壊さずに人間のみを殺す中性子爆弾」の特性になぞらえ、「ニュートロンジャック」と綽名されたこともある。
「そこでわれわれが考案したのが『バイタリティー・カーブ』(活性化曲線)で毎年、全事業部門、全職場で、管理職が部下の総合評価を下す方式だ。部員の二割を指導力のあるトップA、七割を必須の中間層のB、残る一割を劣るCに位置付け、Cの人には辞めてもらうか、別の部署に配置転換する。この評価は必ず昇進、昇給、ストックオプションに見合わせる。AはBより昇給額が二、三倍多く、Cは昇給ゼロとする。
管理職も一年目はCを選ぶのも簡単だが、二年目には困難で、三年目には戦争となる。部下をランク付けできない管理職は本人が上司からCにランクされる。Aの人に会社を辞められるのは重大な損失であり、上司の管理職の評価に響く。
Cを追放することを冷酷無残だと考える人もいるが、実は全く逆だ。本人が成長もせず、豊かにもならないまま放置しておくことこそ『偽りの親切』で残酷だ。長い間、表面上を取り繕って平等に扱い、中高年になってから『君は要らない』と放り出す方がはるかに冷酷だ」(「日本経済新聞」2001.10.25)
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日本では一般に、従業員の業績などの評価を正規分布した緩やかな放物線を元にABCのランクを付けて評価する方法がよく採用されています。この場合、全体をA20%、B60%、C20%と分け、上位の賞与支給額を多くするなどとしています。
しかし、このウェルチ流評価の方法を読み、私自身が管理職時代にこのような基準で部下を評価し、役付役員になっても同じような評価と実行をトップから強要された場合、果たして最後まで忠実に実行できただろうか……と考えてしまいます。
ウェルチのようにドラスティックな人事評価や経営改革を行なう勇気と、深い思いやりある厳しさはうらやましく思う一方、経団連の平岩外四元会長が愛した「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格などない」(ハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの言葉)は、けだし名言であると思いました。
経営者は、精神的にも肉体的にもタフでなければ生きていけません。しかし、外国と日本の企業経営者には大きな違いがあると思わされてしまいます。