掲載時肩書 | 奈良女子大名誉教授 |
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掲載期間 | 1965/12/06〜1965/12/31 |
出身地 | 大阪府 |
生年月日 | 1901/04/19 |
掲載回数 | 26 回 |
執筆時年齢 | 64 歳 |
最終学歴 | 京都大学 |
学歴その他 | 三高 |
入社 | 京大講師 |
配偶者 | 記載なし |
主な仕事 | 祖父・父の情操教育、昆虫採集、数学(日本人:情緒的、欧米:インスピレーション)、仏留学4年、広島文理大 |
恩師・恩人 | 藤岡英信先生 |
人脈 | 中谷宇二郎、杉谷岩彦先生、秋月康夫、夏目漱石・芥川竜之介(の愛読者) |
備考 | 代々庄屋で宿屋、読書速読(1時間120p、芥川600p) |
1901年〈明治34年〉4月19日 – 1978年〈昭和53年〉3月1日)は大阪生まれ。数学者。奈良女子大学名誉教授。理学博士フランス留学時代に、生涯の研究テーマである多変数複素関数論に出会う。当時まだまだ発展途上であった多変数複素関数論において大きな業績を残した。一変数複素関数論は解析学から数学的解析に至る雛型であり、そこでは幾何、代数、解析が一体となった理論が展開される。本来あるべき数学はこれを多次元化する試みであると考えられる。一変数複素関数論の素朴な一般化は多変数複素関数論であるものの、多変数複素関数論には一変数複素関数論にはなかったような本質的な困難が伴う。これらの困難を一人で乗り越えて荒野を開拓した人物である。
1.数学の面白さ
幾何をやめて代数だけにしようという動きが欧米にあると聞くのは数学にとって嘆かわしいことである。彼らのやろうとするのは形は数学であっても、内容は論理とか計算に過ぎない証拠である。私がもし代数だけ教えろというようなところへ赴任したら、クビになるのを覚悟で代数を割愛し、幾何を教えようと思う。数学者には耳の型もあるが、八割までが目の型である。目の型なら初等幾何を教えるのが一番である。
だいたい図形などを取り扱う数学は見当もつかなかった。それまでは算術、代数と、いわば大きさを取り扱う数学だけであり、形を扱う数学はなかった。いろいろな珍しい問題の内でも補線の引き方など実に難しいが、また面白いものである。
2.数学への動機と最初の成果
私が数学を志した表面上の動機は中学3年の時にクリフォードの定理に神秘を感じたのが始まりで、京大安田教授の試験問題を解いたのが終わりである。しかし私が数学を志した真の理由は私の意識にのぼらないものだが、多分次のようなものだろうと想像される。・・私はこれまで日本のものはよく勉強して知っている。しかし、西洋のものは少しも知らない。だから西洋のものの内から数学を選んでそれの勉強に一生を費やすことにしようと。
ある朝、私は何か些細なことで妻と口論して、京都の植物園前にあった家を飛び出し、神楽坂下の中国人の店へはいって散髪ののち耳掃除をしてもらっていた。そうすると、“パーミュティブルな有理函数のイテレーション”に関する非常に大切な手がかりがインスピレーション式にわかった。数学上の発見はインスピレーション的である、とポアンカレはその著書で述べているが、私がこの通りの形式で数学の研究に貢献したのはこれが初めてである。そのあと長くかかって、一つの有理函数とパーミュティブルな代数函数の存在する場合の有理函数はどういうものでなければならないか、ということにまでジュリアやリットの研究を拡張することに成功した。私はそれを仏文に直してフランスで発表しようと思った。
3.数学に対する日本人の取り組み期待
1929年春、仏国に出発し、4年間留学した。今日では多変数解析函数が私の数学研究の中心になっているが、現在私の目指している数学はもはやそれではない。簡単にどういう数学を目指しているかというと、だいたい西洋のものはひと口に言えばインスピレーション型であり、東洋のものは情操型である。だから私たち東洋人が西洋人の始めた数学をやるのに、インスピレーション型と情操型の2つのやり方がある。インスピレーション型は一度花が咲いたら枯れてしまう草花に似ているし、情操型は常盤木に似ている。
私は、日本人は数学をこの情報型でやって、常盤木のように絶えず伸ばすのが良いだろうと思っていたが、それを始めようと思い立ったのは最近のことである。それが今の私の数学研究のありさまである。
岡 潔 おか きよし | |
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1973年、京都にて。 | |
生誕 | 坂本 潔 1901年4月19日 大阪府大阪市 |
死没 | 1978年3月1日(76歳没) |
国籍 | 日本 |
研究分野 | 多変数複素関数論 |
研究機関 | 京都帝国大学、ソルボンヌ大学ポアンカレ研究所、広島文理科大学、北海道帝国大学、奈良女子大学、京都産業大学 |
出身校 | 京都帝国大学 |
主な業績 | 多変数複素関数論 |
影響を 与えた人物 | 湯川秀樹、朝永振一郎、広中平祐 |
主な受賞歴 | 朝日文化賞(1954年) |
プロジェクト:人物伝 |
岡 潔(おか きよし、1901年〈明治34年〉4月19日 - 1978年〈昭和53年〉3月1日)は、日本の数学者。理学博士(京都帝国大学、・論文博士・1940年)。奈良女子大学名誉教授。奈良市名誉市民。従三位勲一等瑞宝章。