阿刀田高 あとうだ たかし

文芸

掲載時肩書作家
掲載期間2018/06/01〜2018/06/30
出身地東京都
生年月日1935/01/13
掲載回数29 回
執筆時年齢83 歳
最終学歴
早稲田大学
学歴その他
入社国会図書館・司書
配偶者職場結婚
主な仕事大学療養生活、ブラック・ユーモア、直木賞、ギリシャ、旧約・新約聖書、文学を朗読で紹介、本を贈る運動、
恩師・恩人
人脈吉行淳之介、向田邦子、井上ひさし、早乙女貢、
備考山梨図書館長
論評

作家としての「履歴書」登場では、直近の津本陽渡辺淳一に次いで54人目であるが、早稲田出身では、三浦哲郎江戸川乱歩広津和郎尾崎一雄尾崎士郎井伏鱒二中山義秀石川達三に次いで、9人目である。

私にとって興味深い記述は、直木賞選考委員になったときのものである。9人の選考委員はすべて作家であるが、氏は一番適切な選考のできる人は、長らく小説類を扱う出版社などで作品を吟味することを職務とし、多くの作家と接し、作家を育てた編集者だと私見を述べている。この考え方が公平で正しいと思うが、これだと受賞者や読者からすれば、納得性と権威付けが有名作家の選考によるのと比べると弱いと感じられる。氏がこの賞を推薦する尺度は、「この作品は私には書けない」と思うものだ。この選考基準は、小説家が「私には書けない」と感ずるのは、新しいもの、今までにないもの、微妙であるが未来志向を含むものなどだと。その具体例として、井上ひさし氏は「これは天下の傑作です」、五木寛之氏は「このごろ世代的にこういう軽さが支持される」、田辺聖子氏は「男たちはすぐこんな小説を褒めて」とか、平岩弓枝氏は「入念な時代考証を褒める」などそれぞれの実力小説家が持つ強み・特徴が評価となっていることでした。

また氏は、「朗読はそれ自体一つのジャンルだ。演劇とも異なるし一人で読む読書とも明らかに違う」と書く。この体験は、妻の慶子氏と二人で舞台に上がり、彼女が氏の小説を読み、それを氏がそれに因んだ話をすることで痛感したのだろう。「演劇では役者は基本的に自分の役に専念する。朗読者はすべての登場人物に適応しなければならないし、状況を広く読み込まなければならない。内容をよく理解し、それを音声で伝えることが大切だ。同じ表現でも本気なのか、ジョークなのか、間違ったら話にならない。この意味でも朗読者は演出を兼ねているところがある」と書く。私(吉田)も「私の履歴書」関係の講演をしたことがある。ある講演会では、登場人物のエピソードのサワリ部分をセミプロの朗読者に朗読してもらった。この朗読の余韻が残っているところで私が登場人物の補足説明をすると、聴衆者が大いに喜んでくれた経験を持っている。だから、朗読は氏が述べているとおりと納得する。

氏は現在83歳である。最後のページには座右の銘について書いている。「昨近は死を意識することも多く「花は散るために咲く」と勝手に箴言を作って座右に置いている。花は散るからこそ美しい。人も、私たちの営みはすべて死を意識することから中身を濃くしてきた。残された余生はこのあたりを考えよう」と。いい心境だなぁとつくづく感心し同感した。

阿刀田 高
(あとうだ たかし)
文化功労者顕彰に際して
公表された肖像写真
ペンネーム阿刀田 高あとうだ たかし
誕生阿刀田 高あとうだ たかし
(1935-01-13) 1935年1月13日(89歳)
日本の旗 日本
東京府
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 早稲田大学第一文学部フランス文学科
ジャンル 推理小説
奇妙な味
ショートショート
代表作 『冷蔵庫より愛をこめて』(1978年)
『ナポレオン狂』(1979年)
『ギリシア神話を知っていますか』(1981年)
『新トロイア物語』(1994年)
『獅子王アレクサンドロス』(1997年)
主な受賞歴 日本推理作家協会賞(1979年)
直木三十五賞(1979年)
吉川英治文学賞(1995年)
旭日中綬章(2009年)
文化功労者(2018年)
デビュー作 『ころし文句』(長崎寛との共著)
親族 阿刀田令造(伯父)
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(あとうだ たかし、1935年1月13日[1] -)は、日本小説家。「奇妙な味」の短編で知られる。1993年から1997年まで日本推理作家協会会長、2007年から2011年まで日本ペンクラブ会長を務めた。文化功労者山梨県立図書館名誉館長

国会図書館司書を経て、『冷蔵庫より愛をこめて』(1978年)で作家に。『ナポレオン狂』(1979年)で直木賞を受賞。ブラックユーモアミステリーを盛り込んだ短編の名手。ほかに『佐保姫伝説』(2009年)、『闇彦』(2010年)など。

  1. ^ 阿刀田高氏 顕彰状”. 早稲田大学 (2011年4月1日). 2023年12月19日閲覧。
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