滝田実 たきた みのる

団体

掲載時肩書全繊同盟名誉会長
掲載期間1972/09/18〜1972/10/14
出身地富山県
生年月日1912/12/15
掲載回数27 回
執筆時年齢60 歳
最終学歴
工業高校
学歴その他高岡工芸高
入社日清紡
配偶者見合(5歳下)
主な仕事日清紡組合会長、全繊会長、米国訪問、生産性本部、日清紡退職、アジア繊維同盟会長
恩師・恩人鷲尾勇平
人脈松岡駒吉、木川敏一、和田春生、河上丈太郎、郷司浩平、足立正、中山伊一郎、太田薫
備考社長(宮島清次郎、桜田武)と交渉
論評

1912年12月15日 – 2000年12月9日)は富山生まれ。昭和から平成時代の労働運動家。1959年民社党結成に先立つ民主社会主義新党準備会に参加、政策・運動方針起草委員会の幹事に就任。1965年民社党顧問。連合結成時のスローガン「力と政策」を提唱した。労働ジャーナリストの水野秋は、戦後労働運動の大指導者として高野実、細谷松太、太田薫、岩井章、滝田実の5人を挙げている。ゼンセン同盟名誉会長。全国繊維産業労働組合同盟(全繊同盟)第3代会長、全日本労働組合会議(全労)初代議長、全日本労働総同盟(同盟)第2代会長。

1.胃潰瘍悪化で死の宣告受け
昭和16年(1941)32歳のとき召集があり、入隊したのは千葉の椿森にある東部第86部隊の鉄道隊だった。紡績工場での交代勤務の夜業がたたって、前から胃の調子を悪くしていたところ、軍隊生活によっていよいよ悪化し、胃潰瘍の症状が極限まで来ていた。当時は麻酔や切開手術は不十分だったので極力、内科治療で済ませようと努力したがダメであった。そこで最後の方法として選んだのが断食療法である。
 1週間は予備断食、2週目は完全断食、3週目は元に戻すために、計21日間の「行」であった。社宅の一室に閉じこもり、壁に21日間のカレンダーを書いて貼り付けた。そして「この断食に勝てば生きられる」「必ず勝つ」。そう書いて断食に入った。が、結果的には病気に勝てず、「今夜限りです」の宣告を受けた。断食も功を奏せず、医師から最後通告を受けた私の病床に富山から母や兄が駆け付けており、葬式の打ち合わせがされていた。私は衰弱の中にも意識だけはしっかりしており、これをふすま越しに聞いていた。
そこへ臨終を知った工場の同僚が見舞いに来てくれ、「すぐ病院に運んで手術をしよう。タンカを呼べ」で美合工場の病室に担ぎ込まれた。半麻酔で手術は4時間かかった。5日目に手術が成功したと言われた。

2.労働運動に入る
昭和20年(1945)の秋、松岡駒吉氏が日清紡の本社にオートバイで駆け付けた。松岡さんはこれからの日本にとって労働運動の必要なこと、労働組合の責任の重要さを切々と説かれた。この話を聴く集まりの中に私も加わっていた。私は本来エンジニアだから、労働運動に関する知識は乏しかった。しかし私には10数年にわたる紡績工場の汗と油の労働の体験があった。何の予告もなしに突然クビを切られ、泣き悲しむ労働者のあったことも自分の目で見てきたし、農村の貧困と失業を背景に年若い少女たちが低賃金で長時間労働を強いられていることも、誰よりもよく知っていた。理論的なことよりも、まず労働者は労働組合をつくって強くならなければならない。
そう一途に考え、まず本社組合の結成を急いだ。事務所もなく、机も椅子もない。仕事が終わってガリ版刷りをするのが精一杯だったが、意外に思えるほど同調協力する人が多かった。やがて準備委員が決まり、本社支部が結成され、私が支部長に選任された。

3.組合幹部の大切な心得と大原則
労組幹部は大きな権力の座を占めているように外から見られているが、内実はそうではない。会社や政界のような人事権、金の力を行使することはほとんどできない仕組みになっている。もしそれを行使すれば、独善のそしりを免れず腐敗が起きることは避けられないばかりか、やがて不信は爆発する。
 組合幹部の心がけとして最も大切なことは労使間を清潔に、組合員とその家族の利益と幸福に奉仕することであるが、私の経験から言えば、自分の保身や利益を優先させると組織の機能が必ず退化すると思っている。地位や利益は求めるものではなく、与えられるものであると思っている。また、幹部の指導力は大衆の判断で評価され、消化されていくが、組織にとって危機を招くのは、特定の政治問題を組合内部に持ち込んだ時である。労働組合は経済闘争を主軸にする大原則は守らねばならない。

1961年3月3日

滝田 実(たきた みのる、1912年12月15日 - 2000年12月9日)は、昭和から平成時代の労働運動家ゼンセン同盟名誉会長[1]。全国繊維産業労働組合同盟(全繊同盟)第3代会長、全日本労働組合会議(全労)初代議長、全日本労働総同盟(同盟)第2代会長。

  1. ^ 20世紀日本人名事典の解説 コトバンク
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