山岡孫吉 やまおか まごきち

機械・金属

掲載時肩書ヤンマディーゼル社長
掲載期間1959/12/13〜1959/12/31
出身地滋賀県湖北
生年月日1888/03/22
掲載回数19 回
執筆時年齢71 歳
最終学歴
小学校
学歴その他小学校
入社メリヤス奉公
配偶者近所娘25歳
主な仕事大阪瓦斯、山岡発動機(ゴム管・ガス器具販売会社)設立、欧米旅行、小型ディーゼル開発、日本造機
恩師・恩人藤井政太郎、笹山忠夫 (興銀)
人脈起千太郎、江波菊次郎、松永安左ェ門、田中巌、大河内正敏、時津三郎、横井元昭、近藤一郎
備考西独にディーゼル記念碑贈呈
論評

1888年(明治21年)3月22日 – 1962年(昭和37年)3月8日)は滋賀県生まれ。実業家で、世界初の小型ディーゼルエンジンを開発したヤンマー(現・ヤンマーホールディングス)創業者。1905年(明治38年)大阪瓦斯工事人夫として仕事をしていた時にガスエンジンに出会い、技術を学ぶ。1906年(明治39年)独立し、1912年(明治45年)中古ガスエンジンブローカー業を開業し、1921年(大正10年)農業用小型石油エンジンメーカーとなり、ヤンマーを商標として用いた。1932年(昭和7年)欧米視察に出、ドイツで開かれたメッセでディーゼルエンジンに出合い、小型ディーゼルエンジン開発を決意した。1933年(昭和8年)世界初のディーゼルエンジン小型化に成功した。

1.ブローカーからメーカーへの決意
第一次世界大戦後(1918)のパニックは、私にとってそれまで本意なく続けていたブローカー商売から足を洗う転機になったのである。ガスエンジンの商売がダメになって、何か新しい仕事に転換しようと、あれこれ思案して、四国丸亀の起千太郎さんの工場を訪ねた。ここでは改造石油エンジンを活用していた。これを使うと手回しなら5人掛かりで1時間に5俵分くらいしか擦れなかった籾が、6倍の30俵は擦れるという。これはイケル!百姓生まれの私には、この“動力もみすり”がどんなに素晴らしいものかがすぐ分かった。
 だが肝心の石油エンジンでは重すぎる。ガスエンジンを改良しただけでは、3馬力のエンジンで重さが150貫(約563キロ)もあって、持ち運びに不便である。これでは普及すまい。もっと軽いエンジンが必要だ。
何とかして自分でそれを造ってみよう。「ブローカー商売は、自分は汗を流さないでおいて口先だけで中間利潤をむさぼる商売だから、いわば詐欺と同類だ。ここで新しい仕事に変わるのを機会に足を洗おう。自信のある仕事がしたい。メーカーになろう」。農業用の石油エンジンメーカーに・・こう決心したのでした。

2.商標「ヤンマー」の由来
私が子供の頃「今年はトンボがたくさん飛んでいる。きっと豊年やで・・・」と父が言っていたのを覚えていたので、豊作の使者を象徴する石油エンジンとして、最初は「トンボ印」と名づけて新聞に公告したのである。ところが静岡のある醤油機械屋の撹拌機の商標がトンボ印だったことから商標侵害問題が起こった。この解決のため、私が450円出してトンボの商標権を買い取ることに話がまとまりかけた時、江波菊次郎という社員が「そんな商標を買う必要はない」と言い、「トンボの親玉であるヤンマとしたらどうか。これなら商標侵害に当たらない」と進言してくれた。これはいい考えだ。ヤンマはトンボの親玉、おまけに山岡という私の姓にも近い。そこで少し言いやすく「ヤンマー」ということに決めて、2019年12月に商標申請をしたのである。

3.小型ディーゼルエンジンの完成(皇太子さまの誕生日)
昭和7年7月、私が欧米視察旅行から帰るとすぐ、世界最初の小型3馬力ディーゼルを目標に、設計、試作に取り掛かった。私がドイツから持ち帰った知識とデッケル社の燃料ポンプを種にして、昼も夜も汗みずくなって設計に没頭したがもとより簡単にできるわけはない。2度目の夏も終わりに近づき、秋の彼岸がくるころ、私は遂に力尽きてこの開発を一時断念せざるを得なくなり、技術陣を集めて言い渡した。「みな暑いのに頑張ってくれてすまぬと思っている。だが残念ながら、はや一年余りも苦しんで同じことを繰り返していたのでは、もうこれから先も見込みはない。小型ディーゼルは一時諦める。一人に200円ずつやるから、これで有馬か白浜温泉へ行って、夏の疲れをゆっくり癒してくれ」と。ところがみなは温泉に行くどころか、翌日からハチマキをして、余計に精を出した。・・・・念願がかなう日が来た。年の暮れが押し迫ったころ、
 「社長、回りました」と言って、みんな飛び出してきた。回ったか!試作室に飛んで行ってみると回っている。何はともあれ、白鶴の4斗樽こもかぶりで乾杯しようと、呼びかけたが、14,5人の技術陣が、エンジンの周りで、ハンカチを目に当てて泣いているのである。無理もない1年5か月の苦労の末だから。私も急に涙があふれ出た。昭和8年12月23日、外には皇太子様ご誕生の号外の鈴がリンリンなっていた。

実業之日本社『実業之日本 4月1日特大号』より山岡孫吉

山岡 孫吉(やまおか まごきち、1888年明治21年)3月22日 - 1962年昭和37年)3月8日)は、日本の実業家で、世界初の小型ディーゼルエンジンを開発したヤンマー(現・ヤンマーホールディングス創業者。

[ 前のページに戻る ]