坂倉芳明 さかくら よしあき

商業

掲載時肩書三越相談役
掲載期間1997/11/01〜1997/11/30
出身地東京都
生年月日1921/10/29
掲載回数29 回
執筆時年齢76 歳
最終学歴
慶應大学
学歴その他慶応予
入社ニコン
配偶者社内結婚
主な仕事三越、戦後学卒1号、クレジット導入、退社、西武百貨店、緑屋(クレディセゾン)、有楽町西武、台湾・パリ進出
恩師・恩人岩瀬英一郎、市原晃
人脈奥野信太郎、中川順、松田伊三雄、岡田茂(ライバル)、川村貢、堤清二、和田繁明、堤義明、小山五郎
備考趣味:カメラ200台
論評

1921年(大正10年)10月29日 – 2014年(平成26年)5月13日)は東京生まれ。実業家。西武百貨店、三越各社長、日本百貨店協会会長を歴任した。常務時代には松田伊三雄社長の後継として岡田茂と並び称されるが、後継社長に岡田が就任すると真っ先に粛清の槍玉に挙がってしまう。知己である堤清二からの再三の懇請により、1974年10月、西武百貨店に入社し副社長に就任。1977年には社長に就任。店舗の活性化や徹底した社員教育を実施したほか、自身と同様に岡田から疎んじられた三越時代の部下を起用し、西武百貨店を一流レベルにまで引き上げ、在任中には池袋店が日本橋三越本店を抜き、売り上げ日本一を達成した。

1.クレジットカードの導入
私の業務部時代、後世に残る大きな仕事だったと自負しているのがクレジットカードの導入である。1960年10月、業務課長だった時に富士銀行との間で日本初の信用保証に基づく延払い信用販売(クレジットカード)制度を発足させた。富士に10万円の定期預金をした人に三越がクレジットカードを発行し、そのカードがあれば10万円の範囲内で三越で買い物ができる。富士はこれを「お買い物預金」と呼んで宣伝し、話題を呼んだ。お客が支払えなくなった場合、富士がこの預金で三越に支払う仕組みだ、今でこそ当たり前のクレジットカードも産業金融が全盛の当時は画期的なシステムだった。
 しかし、米国ではクレジットカードが普及期に入り、百貨店もハウスカードを発行して信用販売を始めていた。日本も56年に経済企画庁が「もはや戦後ではない」という経済白書を発表し、消費が急速に伸びていた。私は米国の状況を見て「これからは消費者信用が不可欠になる」と強い興味を持ち、同じ問題意識を持っていた富士との提携を進めたのだった。

2.西武百貨店への入社
堤清二氏から最初の西武への誘いは三越を退社した直後の1973年4月末だった。都内の小料理屋で、「いま西武百貨店の中心になって動いている若手の幹部はあなたとは10歳くらいの年齢差なので、上に立ってやってもらうに丁度いい」という話をされた。私は即答を避けた。他にも2,3誘いがあったのと、西武は人を使い捨てするという噂があったのが気になっていた。しかし、堤さんはその後も辞を低くして懇請され、年末には西武入りを決意した。入社は74年4月、すぐに副社長になった。
 入社の条件として堤さんにこう言った。「職位については何も言いません。ただ、あなたと直接話ができるポジションにしていただきたい」。西武は新進気鋭の近代的な企業というイメージを世間に与えていたが、実際は堤氏のカリスマ的な指導によるワンマン経営であることは業界内で知られていたからだ。しかし、この条件は西武への仲介の労をとってくれた知人が確認してくれた。堤さんはグループの人事を固める一方、翌75年に私に代表権を与えるなど配慮をしてくれた。

3.堤清二氏
82年度、西武百貨店の池袋店の売上高が東京・日本橋の三越本店を抜いて日本一になった。私はそれほどの事とは思わなかった。三越側が岡田茂社長の解任騒動に揺れて、業績が急激に悪化したのが主因だからだ。敵将が馬から落ちたから日本一が転がり込んだにすぎない。ただ、日本一が西武社員の士気を高めたのは確かだった。
 堤さんはその1,2年前から積極的な事業展開を主張していた。堤さんの積極さは昔からの事だ。西武流通グループ(現セゾングループ)のオーナーとして百貨店、スーパー、文化、レジャーと急速に事業領域を広げ、短期間で巨大な企業集団を築き上げた。その着眼と発想は素晴らしく、詩人、小説家としても活躍する才能は私のような百貨店一本で来た人間には及ばない多面性を備えていた。
 だが、当時の堤さんの提案は西武の体力から見て急すぎると私は思った。百貨店の多店舗化の他に、グループ全体に広げると、リゾート、ホテルなどさらに多くの提案、計画があった。西武の資産は乏しく、その通りすれば借金が膨れ上がる。私は「借入金は一定以下に抑えなければ危険です」と言って、堤さんの提案を抑える側に回ることが多くなった。この後、堤さんと話し合う機会は次第に少なくなっていった。

坂倉 芳明(さかくら よしあき、1921年(大正10年)10月29日 - 2014年(平成26年)5月13日)は、日本実業家西武百貨店三越各社長、日本百貨店協会会長を歴任した。

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