石毛郁治 いしげ いくじ

電気・ガス

掲載時肩書東洋高圧社長
掲載期間1957/10/29〜1957/11/18
出身地千葉県飯岡
生年月日1895/05/18
掲載回数20 回
執筆時年齢63 歳
最終学歴
東京工業大学
学歴その他成東高
入社三井鉱山
配偶者9歳姉さん女房
主な仕事大牟田、欧米視察、三池窒素、東洋高圧―>三井東圧化学、社長、会長、硫安工業協会会長
恩師・恩人横田先生
人脈田中寿一、日産化学来栖社長、日東化学秋葉社長、浜田庄司、河野一郎
備考家業・魚加工、飯岡の助五郎が地元
論評

1895年5月18日 – 1981年9月1日)は千葉県生まれ。化学技術者、実業家。三井鉱山入社。肥料用尿素の大量生産法の開発に成功し、1947年から東洋高圧工業社長を務め、1963年には会長に就任。1964年蔵前工業会理事長。1966年からは三井化学工業社長を務め、1968年には東洋高圧工業と三井化学工業の合併にあたった。氏は天保水滸伝を語るがごとく講談調で著述してくれていた。

1.蔵前高工(現東京工業大学)の試験
大正時代のはじめ蔵前の試験は随分あっさりしたもので、一科目終わるごとに、正門の所に次の者は以後受験に及ばず、という貼紙が出て、これに落第坊主の受験番号が書き出される仕掛けでした。
 私は最後までこれに漏れて、最後の口頭試問も終わり、宿に帰って叔母と雑談していますと、訪ねてきた男が「学校指定の洋服屋ですが、おめでとうございます。つきましてはご制服の御用は是非手前どもへ」という。「明日にならなければ入ったかどうか分らんじゃないか」というと「先ほど門に発表がありました。学校でお宿がこちらと伺いましたので、ご寸法さえいただいておけば新学期に間に合うように準備します」という手回しの良さ。なるほど生き馬の目を抜くというが、これだなと思ったりしながら、洋服は頼むことにした。

2.蔵前高工の楽しいイベント
学生生活の中に二つの楽しい行事がありました。開校記念日と修学旅行です。4月の初めに開校記念の式典が行われると続いて二日間全校を開放して、一般の参観に供し、当時東都の一名物でありました。
 記念日前となると準備が大変です。各科思い思いに飾り立てて、習ったばかりの最新知識を実験でお目にかけようと準備を進めるのですが、熱を入れただけあって、これはなかなかの呼び物でした。ことに応用化学科の化粧品の即売と、紡織科のセルの切り売りは若いご婦人に人気がありました。応化ではこれに備えて委員会があり、原料を仕入れて平素の実習の材料に供するとともに、これで記念日の商品の製造をやるといった一石二鳥で、利益の大部分は校友会に召し上げられるのですが、リベートと申しましょうか、脱税の方が相当多くて、この金でボート部の応援費も出せば修学旅行費の補助もするといった具合で、他の科の連中の羨望の的でした。
 修学旅行もこの学校の楽しい年中行事でした。いわば慰安の一泊旅行で旅行そのものよりもその前が楽しみなのです。旅行前ともなると歌の練習が始まります。校歌は音楽部の連中が正式に教えるのですが、それから先は無茶苦茶です。ボートの応援歌は三部がその声の大を競います。ここまではまずまずですが、これからは段々オラが国サに入っていきます。例えば四国出身の連中が音頭を取ってヨサコイを教える。阿波踊りが始まる。北海道組がソーラン節を教えれば、新潟組は佐渡オケサといった具合で、オバコが出る、大漁節が始まる。安来節、磯節、おはら節とありとあらゆる民謡俗謡が登場する。全くもってお国自慢コンクールといった有様となる。ボートの応援に使う大旗小旗が持ち出され、運動場でも始まるのでした。

3.三井鉱山の大牟田職場
22歳の私がこの炭鉱に赴任すると「今度の役人は青ン僧タン、なごうはモテンバイ」との職工の下馬評だった。私はまず職工の名前を覚えることを心がけた。みんなこの青ビョウタンに何ができるかという顔付でした。私は一番骨の折れる力仕事を続けざまに3つ4つ続けて見せ、彼らの仲間入りを果たした。面白いのは夜勤で、連中で勝手に2組に分かれて12時までの前半を働く組と、朝までの後半を働く組ができ、遊んでいるヤツらは活動写真を観に行くものもあり、近所の飲み屋でトグロを巻くヤツ、酒を持ち込んで酒盛りをやる、バクチをやるなど平気でした。女子の夜業が禁じられないころで、昼と同様女がおります。これが半舷上陸ですから大変です。夜ともなればコークス炉の付近は上野の森を笑えないような百鬼夜行有様で、とった、とられた、のケンカが絶えませんでした。職員の中にもそれを役得と思っているのもありました。

石毛 郁治(いしげ いくじ、1895年5月18日 - 1981年9月1日[1])は、日本化学技術者実業家。東洋高圧工業(現三井化学)社長や、三井化学工業社長を務めた。

  1. ^ 石毛 郁治』 - コトバンク
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