内村祐之 うちむら ひろゆき

医療

掲載時肩書東大名誉教授
掲載期間1972/11/10〜1972/12/05
出身地東京都
生年月日1897/11/12
掲載回数26 回
執筆時年齢75 歳
最終学歴
東京大学
学歴その他一高
入社松沢精神HP
配偶者父の 愛弟子で私のファン
主な仕事一高・東大(投手・黄金時代)、北大教授 (30歳)、ドイツ留学、東大教授、疲労研究、被爆者研究、精神衛生研究所、コミッショナ、
恩師スピルマイヤー、クレペリン両教授
人脈城戸四郎・斉藤茂吉(先輩)、勝沼精蔵、長与又郎先生、帝銀事件(平沢貞通)、大川周明(精神鑑定)
備考父内村鑑三(ピューリタン主義)
論評

1897年11月12日 – 1980年9月17日)は、日本の医学者、精神科医。キリスト教思想家として著名な内村鑑三を父、内村の4度目の妻内村静子を母として、東京府に誕生する。学生野球界では特に一高時代に、早稲田・慶應義塾を久しぶりに撃破するなど名だたる左腕投手として名を馳せた。1918年には15年ぶりの全国制覇を果たした。専攻は臨床精神医学・神経病理学。東京裁判のA級戦犯になった大川周明の精神鑑定と治療を行う。内村は大川を梅毒性精神障害と診断した。 また、帝銀事件の平沢貞通や、婦女連続殺人事件の小平義雄などの精神鑑定を行った。東京大学名誉教授、プロ野球コミッショナー。

1.父・内村鑑三の教育方針
私は明治44年(1911)に、現在の独協中学、当時は独逸学協会学校中学、俗に独協と呼ばれていた中学に入学した。なぜ、府立一中(現日比谷高校)ではなく、このような特殊な学校を選んだのか?
 父の教育方針は、あるワクの中での放任主義ともいうべきものであったようだ。そのワクとは清教徒的精神主義であって、少年期に守るべきこととしては、毎日曜日に教会の日曜学校に行くこと、毎食前に感謝の祈りをささげること、金曜日の夜は家庭のキリスト教的集会に出ることが定められており、長じては禁酒禁煙とノーサンデーゲーム、つまり日曜日にはゲームをしてはならないという規約を守らねばならなかった。彼はスポーツの効用を認める反面、エネルギーをスポーツに傾けすぎて本業をおろそかにすることをいたく嫌った。彼は徹頭徹尾ピューリタニズムの信奉者であった。

2.出征兵士の精神疲労調査
昭和18年(1943)6月、名古屋大学の勝沼精蔵博士と共に海軍省から派遣されて、ガダルカナル島の激戦後の海軍航空兵の疲労の実態調査と、その対策のために行った。
 ラバウル航空兵の多くが訴えた身体の故障を、私は身体的過労のためとは考えず、生命を賭けての連続出撃の緊張に由来する精神疲労と解した。そこで、その対策として、気分転換を図るための交代制を進言したが、これらは既に要員が不足していたため実行できなかったということである。国内には当時「疲労研究班」というものが組織されて、各方面の専門学者が疲労の研究に取り組んでいたが、彼らの多くはこれを身体の疲労という意味にのみに解釈し、精神的側面から生じる能力低下という私の主張には耳を傾けなかった。睡眠と栄養さえ十分ならば疲労は防げるといった単純な考え方では、複雑な人間性のからくりが解明されるはずもない。しかも精神疲労の強いものはノイローゼの入り口だから警戒が肝要だ。

3.東京裁判時の大川周明の精神鑑定
昭和21年(1946)5月3日の極東裁判・開廷第一日に、法廷で、元首相東條英機氏の禿頭に平手打ちを食わせるような狂態を演じたので、精神異常を疑われて病院に収容され、精神鑑定を頼まれた。
 精神異常の起こったのがちょうど軍事裁判の始まる時であり、治療の結果、その症状が消失して全く健康を回復したのが裁判の終わるころであったため、世間一般の人はこれは偶然のことではないとした。軍事裁判の始まることが大きな精神的ショックとなって発病したのだとか、大川氏は賢い人だから、裁判を避けるために意識して病気を装ったのだとか、噂するようになったのである。日本側の弁護団の副団長であった清瀬一郎氏までがこの考え方に傾いていたのだから、他は推して図るべしである。しかし私が直接経験した限り、大川氏にそのような風は全くなかった。むしろ軍事裁判を猿芝居だと嘲って意気昂然たるものがあったし、また裁判から自分が除外されると聞いて、所信を連合国に聞かせてやる機会が失われたと大いに憤慨していたのである。
 事の真相は、一つの定型的は脳病に発して、狂態はその結果だったということである。ただそれが裁判開始の日と時を同じくして始まり、全く偶然に、裁判終了の時になって治癒したのだった。

内村祐之(1934年)

内村 祐之(うちむら ゆうし、1897年11月12日 - 1980年9月17日)は、日本医学者精神科医。専攻は臨床精神医学・神経病理学。東京大学名誉教授日本学士院会員。プロ野球コミッショナー

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