岡崎は、日本銀行に入行した翌大正12年(1923)、小樽支店に配属となり、そこで3年間、銀行の初歩を習った。
その後、大正15年(1926)に本店に帰り、文書局、昭和2年(1927)の金融恐慌で特別融資が行なわれるときに営業局に替わり、貸出業務を担当した。
このとき、彼は郷里の先輩、学校の先生、日銀、関係企業などの人たちからの「人間関係をよくする」ための助言を真摯に受け入れ、実行した。「私の履歴書」では、それについて次のように書いている。
「若いころに聞いていまでも覚えていることの一つは、〝人から手紙なりはがきなりを受け取ったら、必ず返事を書け″という教えです。向こうの人はこちらから何か言っていくのを待っている。待たせるというのは相手に対し失礼だし、うっかりしてこちらが忘れてしまうと、相手の人は感じを悪くしてこちらを信用しなくなる。
立派に書こうとか、ていねいに書こうとか思って長くおくと、つい忘れてしまう。だからはがきでもいいからあまり時間をおかないで返事を出しなさい、ということを言われたのです。そのとき以来今日でも私は実行しております。私がよく返事を出す、また物を送ったのに対し受け取ったとすぐ知らせるというので、きちょうめんだとはめられることがありますが、それよりも、返事をすぐ出すことによって、人とのいい人間関係ができた例がかなり多く、ありがたく思っています」(『私の履歴書』経済人十巻 433p)
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私もこの助言を入社2年目に読み、さっそく採用したのを覚えています。当初は字数が少なくて半分ですむ絵ハガキを愛用し、返事を迅速対応することにしていました。今でも、旅行先や美術館、動物園の絵葉書などにお礼や旅先の印象を書いて送っています。
これにより、次回の面談時には話題ができ、人間関係がとてもスムーズになる例は非常に多かったのです。
この項では、第一線で活躍するリーダーたちの、人間関係のさまざまな局面を紹介してきました。
人間関係のあり方を一言でいえば、「相手の立場に立って誠実に対応する」ことに尽きます。聖書にもあるように、「自分がしてほしいことを、人にもしなさい」ということです。
そのためには、相手を思いやる心、相手の気持ちを察知する感性が重要となります。