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大正13年(1924)東京生まれの伊藤は、昭和19年(1944)、横浜市立商業専門学校(現:横浜市立大学)を卒業し、三菱鉱業(現:三菱マテリアル)に入社するが、すぐ陸軍入隊となる。
戦後、三菱鉱業の職場に復帰し、昭和21年(1946)家業の羊華堂に入社する。同31年(1956)社長となり、チェーンストア制を進めながら33年(1958)、株式会社ヨーカ堂を設立。そして、49年(1974)に多角化の雄となるセブン‐イレブンの1号店を開店することになる。
伊藤は企業経営の順位を、イトーヨーカ堂時代初期の昭和43年(1968)に自分で作った組織図に集約して社員に見せた。それは、一番上が客と接する「店舗」で、「社長」が一番下にくる、逆三角形の図だった。
オフィスの机の並び方も、客、取引先のほうに顔を向け、管理職は一番うしろに位置しているものだった。伊藤はこの考え方を次のように説明し、周知徹底した。
「私は社是に掲げた言葉(私たちはお客さまに信頼される誠実な企業でありたい。私たちは社員に信頼される誠実な企業でありたい。私たちは取引先、株主、地域社会に信頼される誠実な企業でありたい)を繰り返し、念じ続けただけである。
お客様に信頼も満足もされない企業が満足に配当できるわけがない。株主上場後も、私の気持ちは、お客様、社員・・・の順で、株主は最後である」(『私の履歴書』経済人三十八巻 190、191p)
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この企業原則は、1960年代に伊藤自身が考え出したものです。
それがセブン&アイ・ホールディングスに受け継がれ、コンビニ、総合スーパー(GMS)、百貨店、食品スーパー、フードサービス、金融サービス、ITサービスなどの大事業群として成長しているのです。
今日までの企業発展に結びついていることを考えると、私はこの経営の順位の正しさと素晴らしさを感じます。