私にとって日経「私の履歴書」は人生の教科書です

無益な価格競争を避ける

「大正15年(1926)東京生まれ。小学校卒で家業の建具店を手伝う。昭和24年(1949)日本建具工業(現:住生活グループ)を創設し、社長。同46年(1971)トーヨーサッシへ商号変更、平成4年(1992)トステムへ商号変更。同10年(1998)会長。同13年(2001)INAXトステム・ホールディングスに商号変更し、純粋持株会社に移行。同16年(2004)住生活グループに商号変更。同19年(2009)会長退任。)

*昭和40年(1965)代の日本は住宅景気に沸き、同47年(1972)度には新設住宅着工戸数が史上最多の百八十六万戸に達した。アルミサッシ業界も増産を重ねていたが、大きな落とし穴が待ち構えていた。同48年(1973)の第一次石油ショックである。原油相場につられるようにアルミ地金などの原材料価格が急騰した。するとサッシの値上がりを見込んだ卸や小売業者が買いだめに走る。最初は実需と思い込みみんなが一斉に在庫を増やすことになった。
ところが、仮り需要が膨れ上がった後に、住宅着工が落ち込み、同49年(1974)度の着工戸数は前年度比で約三割減になってしまう。このため膨れ上がった在庫は減らず、業界全体が在庫を減らすために熾烈な安売り競争が起こった。その結果、翌年度には業界のほとんどの企業が赤字に転落してしまった。このとき潮田は価格競争の対応について次のような転換の決断をしたと語っている。

「泥沼の乱売合戦を経験した私は「無益な価格競争はもうやめよう」と決意した。コスト競争力で勝っている分を、顧客の役に立つサービスやシステムの構築に振り向ける戦略を打ち出したのである。
 その一つがTFC(トーヨーサッシ・フランチャイズ・チエーン)と名付けた販売店の経営支援策だ。加盟した販売店には会計や在庫管理、営業手法などの経営ノウハウを提供した。販売店の決算書も当社で作成し、利益率や経費率は加盟店中の何位か、改善すべき点は何かを伝えた。
 当時は営業マンも置かず、工務店からの注文を待っているだけの販売店が多かった。TFCへの加盟で攻めの営業に転じる販売店が増え、当社のシエアも高まった。」
(日本経済新聞 2008.3.22)


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