山路敬三 やまじ けいぞう

精密

掲載時肩書日本テトラパック会長
掲載期間1997/03/01〜1997/03/31
出身地愛知県
生年月日1927/12/26
掲載回数30 回
執筆時年齢69 歳
最終学歴
東京大学
学歴その他静岡
入社キャノン
配偶者片山 >山路(伯母家)、牧師紹介娘
主な仕事ムービーカメラ、ヤマジ式ズーム、エイト、海外視察、プリンター、コピア提携、「映像から情報へ」,テトラパック
恩師・恩人宇野慶三郎、小穴純、御手洗毅
人脈賀来龍三郎、長谷川卓児、滝川精一、御手洗富士夫、御手洗肇、根本二郎
備考座右名「静止は後退」
論評

1927年12月26日 – 2003年12月26日)は愛知県生まれ。ヤマジ式ズームレンズ開発、元キヤノン社長。1993年1月米国の経営誌ビジネスウィークの注目される経営者を選ぶ企画でベストマネージャーの一人に選ばれた(米国以外の企業から選ばれたのは山路が初めて)。1995年に日本テトラパック株式会社取締役会長に就任。

1.ヤマジ式ズームの開発
昭和31年〈1956〉秋に伊藤宏技術課長からズームレンズの設計をやるよう命ぜられた。今まで機械補正方式のズームレンズで実用化されたものはなかった。2つ以上のレンズを動かすことでピントを外さずに焦点距離を変えられる。望ましいものを系統的に探すために、まず凸レンズ、凹レンズ、凸レンズの3つのレンズ群からなる基本形を決め、それを部分的に変えると、どうなるか解析した。するとズームレンズのシリーズが出来る。その中から一番性能が良くなりそうな組合せを選び出した。
 そして私は後に「ヤマジ式ズーム」と呼ばれる世界に類例のないズームレンズを次々と生み出していった。最初の昭和33年(1958)3月に完成したテレビの野外撮影用はフィールドズームというのもだ。ところがこのズームレンズは大砲と言われたほど大きかったので改良を重ねた。小型軽量化の完成は翌34年2月に設計が完了できた。
 33年9月に完成したシネカメラ〈8ミリ〉用のズームレンズは、会社のピンチを救ったことで思い出深い。世界一明るいズームを作ろうと考え、F1・4を実現した。しかもズーム比は4倍で世界広しといえども対抗馬はなかった。これをシネカメラに組み込んで売ろうと提案したのは、当時営業を担当していた前田武男専務だ。こうして生まれた「ズームエイト」は狙いをはるかに上回るヒットとなった。

2.プリンター発売は消耗品とセットで
キャノンには「一位の思想」が満ち溢れていた。何事もトップを目指す考え方で、普通紙複写機(PPC)をつくる時も、ゼロックス方式を超える技術の開発が課題だった。それを田中宏、丸島磯一(現専務)が中心になってインジェクション方式による画像形成法を新たに発明し、昭和40年(1965)7月に特許を出願した。新しい画像形成法を「NP方式」と名付けた。ゼロックスと異なる「ニュー・プロセス」と「ノン・ポリューション」(汚染しない)の2つの意味を込めた。
 私は開発責任者なので当然だったが、特許・法律関係は丸島さんが、技術面は田中さんがそれぞれ中心になって対応した。NP方式をベースにした非ゼロックス方式のPPCの第一号はNP1100で、45年に完成した。機械は1台100万円で売り、1枚コピーをとるごとに10円いただいた。これで念願の消耗品ビジネスが実現した。その代わり、紙、修理部品、定期的に交換する感光ドラム、現像材料などをすべて無料で供給した。消耗品を自前でやることは、新しい複写機を開発する上でも必要だった。感光ドラムや現像材を人任せにしていたら、新しい方式を開発できないからだ。

3.「映像から情報へ」、さらに「エコロジーのキャノン」へ
平成元年〈1989〉3月、賀来龍三郎社長から引き継いで私が社長になった。平成2年の社長方針で「映像から情報へ」、さらに「エコロジーのキャノン」へ、とをはっきり示し、私は多角化を積極的に推進した。21世紀に日本がリーダーとなるべき産業は環境産業だと考えたからだ。また環境との調和を図らなければ、全ての事業がこれから成り立たなくなるという思いが強かった。
 同年1月にはエコロジー事業推進センターを設けた。7月には米国にUSSC(ユナイテッド・ソーラーシステム・コーポレーション)という会社を、ECD(エナジー・コンバージョン・デバイス)と合弁で作った。太陽電池の開発と生産が目的である。京都府の関西文化学術研究都市にエコロジー研究所を設立したのも平成2年で、現在ここで開発した太陽電池を長浜キャノンで生産している。年間生産量はまだ10メガワット。私の夢は立地条件の良い赤道直下の地域で大規模に行うことだ。計算では2㎦に敷き詰めると、300から400メガワットの小型原発並みの電力が得られる。

人事院総裁賞選考委員会委員として、人事院が公表した肖像写真

山路 敬三(やまじ けいぞう、1927年12月26日 - 2003年12月26日)は、元キヤノン社長。愛知県出身。

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