太田哲三 おおた てつぞう

学術

掲載時肩書一橋名誉教授
掲載期間1968/11/22〜1968/12/06
出身地静岡県
生年月日1889/05/08
掲載回数15 回
執筆時年齢79 歳
最終学歴
一橋大学
学歴その他東高商
入社同文館
配偶者記載なし
主な仕事中央大講師、会計学、欧米留学2年、菱化成社長、公認会計士制度
恩師・恩人上田貞二郎
人脈村松梢風(中学友)、原安三郎、中村茂男、岩田巌、中山伊知郎、高橋亀吉、黒沢清
備考経済界の終戦処理関与
論評

1889年(明治22年)5月8日 – 1970年(昭和45年)7月4日)は静岡県生まれ。会計学者、公認会計士。一橋大学名誉教授、元・中央大学教授。商学博士(一橋大学)。監査法人太田哲三事務所(EY新日本有限責任監査法人の前身)の創設者で、日本公認会計士協会の初代会長。1948年(昭和23年)3月、東京商科大学教授を退官。同年5月に長浜ゴム工業の社長に就任し、1950年(昭和25年)まで務めた。

1.恩師・上田貞二郎先生
学者となるには母校の助手として残るのが常道である。けれども私には見込みがない。たまたま上田先生が渡英されるので中央大学の講義を譲られることになった。中央大学の受け持ちは、昼間部は経済学と経済事情とである。先生からご自分のノートを貸与下され、これで講義しろという。ところが他に夜間部で簿記会計の授業があり、それを受け持たなければ、私に必要な50円の月給は出せないという。これ困った。
 中学出身の私には簿記は苦手である。この大正2年(1913)の夏休みに上田先生の財務論は企業会計に一脈通ずるものがある。しかし簿記はダメだ。そこで上田先生にその旨を訴えて、断ってもらおうとしたとき先生から、「簿記ぐらいやれなくてどうする」と一喝され、しぶしぶ引き受けた。その後ハットフィールドの最新会計学なる書物を読んで、その巻頭にある等式説、今でいう二勘定説によって悟りを開いたのだった。

2.会計学者らしくなる
私の処女作会計綱要を書いたのも上田先生の勧めによった。初め巌松堂が上田先生に執筆を依頼したが、私の方へ回された。学者の心理は微妙である。一生の仕事としょうとする課題については軽々に筆は下せない。サイドのものなら手習いにやってもよいという気持ちで会計学を書いた。それが意外の反響を呼び、会計学者の烙印を押されるに至った。これが運命の第3の転機となったのである。
 大正5年(1916)に日本会計学会が発足した。中村茂男君の勧誘で私も入会した。続いて雑誌「会計」へも執筆した。自己嫌悪に陥りながら私はだんだん会計学者らしくなってきた。

3.戦後の企業再生に携わる
経済界の終戦処理は企業再建整備法による会社の整理であった。戦争中の会社経理統制令、戦後の会社経理応急措置法とつらなって、この法令についても会社経理の専門家として私は委員に選ばれた。戦争によって被った特別損失は資本や債務の打ち切りで償い、資産評価は棚卸し資産以外には手を付けないこととした。当時固定資産の再評価で特別損失を埋めるという意見があり、法案審議の時、興銀総裁だった栗栖赳夫氏が提案し、私もこれに賛成したが、大蔵大臣の石橋湛山氏が占領軍との折衝に6ヶ月もかかり、一言でも修正すればさらに2、3カ月はかかると言われ、そのまま通ってしまった。当時の米国軍の威令はそんなものであった。
 当時私は戦争損失を固定資産の再評価で埋め、流動資本は優先株で調達して金融資本依存を止め、証券市場を復興して大衆の蓄積を直接事業会社に向ける必要がある。そのためには監査制度の確立が条件となると論じた。また私はインフレは生産消費の不均衡が真の原因であって通貨膨張はむしろ結果であるとの思想を持ち、節約を説いたが評判が悪かった。先年小説「日本銀行」を読んで当時の一万田尚登総裁も節約論を持っていたことを知り感慨深いものがあった。

太田 哲三(おおた てつぞう、1889年(明治22年)5月8日 - 1970年(昭和45年)7月4日)は日本会計学者、公認会計士一橋大学名誉教授[注釈 1]、元・中央大学教授。商学博士(一橋大学)。監査法人太田哲三事務所EY新日本有限責任監査法人の前身)の創設者で、日本公認会計士協会の初代会長。実業界では長浜ゴム工業(のちの三菱樹脂)社長を2年間務め、その後は三菱化成三菱ケミカルホールディングスの前身)監査役を最晩年まで務めた。従三位勲二等瑞宝章

弟子に番場嘉一郎(一橋大学名誉教授)・黒澤清横浜国立大学名誉教授)・岩田巌(元一橋大学教授)・不破貞春(元明治大学教授)・飯野利夫(一橋大名誉教授)・山邊六郎(元横浜国立大学教授)・井上達雄中央大学名誉教授)・新井益太郎成蹊学園名誉理事成蹊大学名誉教授)・関口重之(元青山学院大学教授)等がいる。
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