古井喜美 ふるい よしみ

政治

掲載時肩書法務大臣
掲載期間1979/07/24〜1979/08/21
出身地鳥取県
生年月日1903/01/04
掲載回数28 回
執筆時年齢76 歳
最終学歴
東京大学
学歴その他三高
入社内務省
配偶者議員娘
主な仕事埼玉、東京府、世界旅行、東条秘書官、最後の内務次官、茨城、警保局長、弁護士、議員、厚相
恩師・恩人安藤紀三郎、大達茂雄
人脈鈴木俊一、小林与三次、山田耕筰(船旅)、町村金吾・灘尾弘吉(1年上)、坂信弥、五島慶太、石井光次郎、松村謙三
備考趣味:長唄、三味線、父・村長
論評

1903年1月4日 – 1995年2月3日)は鳥取生まれ。内務官僚、政治家。日中友好議員連盟会長を務めた。1960年、第2次池田内閣において厚生大臣として初入閣する。厚相としての功績には、(1)省内および医師会の反対を押し切っての結核治療新薬カナマイシンの保険採用、(2)病院経営改善への積極的指導による病院ストの沈静化、(3)自民党内の反対を抑えての、小児麻痺予防のためのソ連からの生ワクチン緊急輸入がある。生ワクチン輸入については後に映画「われ一粒の麦なれど」(監督:松山善三)の主題となった。なお日本医師会会長として全盛期の武見太郎とは激論を交わし対立している。1964年の佐藤栄作政権発足以後、親米・親台湾に傾斜する佐藤への批判を強め、党内で孤立を深めていった。松村謙三らと共に、中日友好協会会長であった廖承志と日中双方の新聞記者交換に関するメモを取り結んだ。

1.内務官僚の経歴
大正14年(1925)から官僚生活に入って12年を経過したが、前半はノロノロ運転であったが、後半はスピードが付いた。欧米旅行中に、一事務官から地方局監査課長になり、半年後に行政課長、二年後に大臣官房文書課長になった。ついで人事課長兼大臣秘書官となり、官房で2年2か月を経験した後、真直ぐに地方局長、茨城県知事、警保局長、愛知県知事、次官となるのである。
 内務省には重要ポストが3つある。一つは、膨大な地方官人事を扱う官房人事課長、もう一つは自治体の監督権を持った地方局長、最後は警察権を握る警保局長である。私はたまたまこの3つを歴任した。

2.東条首相の秘書官
内閣が代わると、内務省の慣例では、次官、警保局長、警視総監は辞めることになっていた。辞める代わりに政党時代にはのちに勅選議員になったものだが、この頃は様子が違っていた。昭和16年(1941)10月18日に東条内閣が誕生、内務大臣は首相自ら兼務するということだ。その時、内務省に残っているのは私だけだから、内務省廃止案の反対を私が直接、新大臣と内務省の折衝をしなければならなかった。
 戦争突入は必至だし、やけくそになって、破れかぶれの心境で朝から酒を飲んだ挙句、新大臣に会うべく出かけた。開口一番こちらから、「初めにお伺がいしたいことがあります。どうして内務大臣を兼任されたのですか」。こちらは大臣が内務省廃止と思っているから、これが一番聞きたいところである。「うん、おれが関東軍にいたとき、警察と憲兵が喧嘩ばかりして弱った。そんなことがないようにしたいのだ」。
 ハハーン。そんなことか。それじゃあまり大上段の問題じゃない。内心ホッとして「総理は戦争をやるおつもりですか」と、ズバッと質問してみた。東条総理は顔を真っ赤にして「そんなこと、お前に言えるか」と大声を上げた。決して、戦争はしないと言わなかったことが私にとっては一つの回答だった。

3.武見太郎医師会会長から「日本のアイヒマン」と・・厚相時代
昭和35年(1960)10月に解散があり、その後の第二次池田内閣で私は厚生大臣に就任した。ところが当時、厚生省は難問山積だった。一つ、日本医労協による前代未聞の統一スト。二つ、医療費値上げを巡って日本医師会とトラブル、だった。病院スト問題は、看護婦たちの待遇改善が主だったので、病院の管理、経営について、労使双方から委員を出し、改善調査委員会のようなものを急遽作り、幸い早期に解決した。
 ところが、医療費値上げ30%は、財源の関係で次年度から技術料など色を付けて引き上げ、ものによって差をつけて、平均10%になるようにしたのである。これまでゼロ回答なのだから、仮に10%でも文句は言うまいと思っていたが、医師会側から一律10%の引き上げでないとダメという。ならば闘うまでと肚を決めた。
 そうすると、遂に全国一斉休診、保険医総辞退という最悪の事態に立ち入った。最後は池田総理と相談して、「予算を10%プラスアルファに増額してもらい」厚生大臣の職権で医療費値上げの告示をした。この後、日本医師会会長、武見太郎氏から「日本のアイヒマン」というニックネームを頂戴した。こんな人間にやらせておけば国民が皆殺しになるという意味だったらしい。少々手こずったと見える。

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