財界へ

 これまで、自分の経歴を大づかみに語ってきたが、最後に私の財界に対する注文を一つ。それは第一に経済道義の高揚ということだ。いまの日本の財界に一番欠けているのはこれだと思う。ことに出血競争がよくない。もともと商売というものは損することもあれば得をすることもあり、これは致し方ないが、はじめから損を覚悟で無茶な競争をやるのは、極端にいえば背徳行為であろう。三十一年前アメリカに行っていろいろな場所を視察し、多くの人に会ったが、各所で聞かされたのが、経済理念というものである。最近のアメリカでは、まずコンシュマー(消費者)に対する責任が第一で、次がシエアホルダー(株主)に対する責任、レーバー(労働者)に対する責任、最後にコミュニティ(社会)に対して責任があるという考えでやっている。